建設業法違反を防ぐための変更契約の基本ポイントと実例解説
建設業法違反リスクを回避するための変更契約の基本ポイント
建設業法違反を防ぐための変更契約の基本ポイントと実例解説していきます。
建設工事では、現場の進行状況に応じて追加工事や変更が発生することが一般的です。しかし、建設業法第19条には、元請負人と下請負人の契約についてのルールが定められており、これを無視すると違反行為となる場合があります。今回は、建設業法第19条第2項および第19条の3に基づく、違反行為の具体例を解説します。
違反となる行為例
- 追加工事が発生したが書面で変更契約を行わない場合
元請負人が下請工事に追加工事が発生したにもかかわらず、書面での変更契約を怠った場合、違反となります。 - 工事着手後や完了後に契約変更を行った場合
追加工事が発生したにもかかわらず、工事の着手後や完了後に契約変更を行った場合も、遅延として違反に該当する可能性があります。 - 発注者との契約変更手続きが完了していないことを理由に下請契約を変更しない場合
元請負人が下請負人に対して追加工事を指示したにもかかわらず、発注者との契約変更が未完了を理由に契約変更に応じない行為も違反です。 - 一方的に工期短縮を求め、協議せず契約変更を行わない場合
下請負人が責めを負う理由なく工期が短縮され、工事完了のために労働者増員などの対応が必要になった際、元請負人が協議をせず契約変更を行わないのも違反です。 - 資材価格の変動を理由に代金を減額する場合
納期が先の契約で、資材価格が変動したことを理由に、既定の契約金額を一方的に減額する行為も違反行為とみなされます。
上記の違反行為はすべて、建設業法第19条第2項に抵触するリスクがあります。元請・下請双方が正しい契約変更手続きを行うことで、法令遵守を徹底しトラブルを回避することが重要です。
追加違反リスクについて
これらの行為はすべて建設業法第19条第2項に違反するおそれがあります。また、以下の場合には第19条の3にも違反する可能性があるため、特に注意が必要です。
元請・下請が気をつけるべき追加工事契約のポイント
建設業では、契約後に現場の状況に応じた追加工事や変更が発生することが少なくありません。しかし、建設業法第19条第2項と第19条の3には、元請負人と下請負人が適切な契約変更手続きをとる義務が明記されています。追加工事に関する契約変更手続きを守るべきポイントを解説します。
追加工事等の着工前に書面による契約変更が必要な理由
元請負人と下請負人は、追加工事などで契約内容を変更する場合、必ず着工前に契約変更の内容を記載した書面を交わし、署名や押印を行う必要があります(建設業法第19条第2項)。これは、後から口約束で変更が行われると契約内容の明確性と正確性が失われ、トラブルや紛争の原因になりかねないためです。災害時などやむを得ない状況を除き、原則として追加工事着工前の契約変更手続きが推奨されます。
スムーズな協議のために望ましい工夫
また、元請・下請間で追加工事に関する協議が円滑に行えるよう、当初の契約段階から建設業法第19条第1項第6号にある以下のような事項をできる限り具体的に定めておくことが望ましいです
- 設計変更が生じた場合の工期変更
- 請負代金の額の変更
- 損害の負担およびその金額の算定方法
事前にこれらを具体化しておくことで、追加工事が発生した際も迅速に協議や調整が進められ、トラブルを防止しやすくなります。
追加工事等の内容が直ちに確定できない場合の対応
追加工事などの依頼を行う際、着工前に全体数量や詳細な内容が確定できない場合もあります。このような場合、その都度契約変更手続きを行うのが不合理な場合には、元請負人は次の内容を事前に書面で下請負人と取り交わしておく必要があります。
- 施工依頼の具体的な作業内容
下請負人が追加工事として行う作業内容を明確に記載します。 - 契約変更の対象および手続き時期
この追加工事が契約変更の対象であること、ならびに契約変更の手続きを行う時期を示します。 - 追加工事の契約単価
追加工事に関する契約単価の額をあらかじめ定めておきます。
数量や内容が確定した時点で遅滞なく契約変更手続きを行うことも義務付けられています。これにより、曖昧な契約内容で工事が進行することを防ぎ、双方の権利を保護します。
元請負人が合理的な理由なく下請工事の契約変更を行わない場合は建設業法に違反
追加工事などが発生しているにもかかわらず、元請負人が合理的な理由なく契約変更に応じない場合、それは建設業法第19条第2項に違反する行為となります。
例えば、元請負人が発注者と追加・変更契約を締結していないことを理由に、下請負人からの追加・変更契約の申し出を拒む行為が該当します。こうした一方的な契約変更の拒否は、下請負人に対する不当な扱いと見なされる可能性があり、法律に抵触するため注意が必要です。
元請負人には、追加工事が発生した際、適切に契約内容を見直し、協議に応じる義務があります。
追加工事の費用を下請負人に負担させることは建設業法に違反するおそれ
元請負人が、追加工事の費用を下請負人に負担させることで、下請代金が「通常必要と認められる原価」に満たない場合、建設業法第19条の3に違反する可能性があります。
具体的には、当初契約に基づく工事と追加工事を実施するのに必要な費用を下回る金額で請負契約を強いることは、不当に低い請負代金の禁止に抵触する恐れがあります。特に、下請負人が元請負人に対して強い依存関係にある場合、このような不公平な負担を強いる行為は法律違反と判断される可能性が高く、注意が必要です。
通常必要と認められる原価」とは
建設業法第19条の3で定義される「通常必要と認められる原価」とは、工事を施工するために一般的に必要とされる価格のことを指します。
具体的には、以下の項目が含まれます
- 直接工事費(作業に直接かかるコスト)
- 共通仮設費及び現場管理費(間接工事費)
- 一般管理費(ただし、利潤相当額は含まない)
この原価は、施工地域における一般的な費用を基に判断されます。
例えば、下請負人の実行予算、資材業者との取引条件、同地域内の同種工事の実例などが参考とされます。
最後に
建設業法違反を防ぐための変更契約の基本ポイントと実例解説を紹介しました。
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