法人成りしたら建設業許可はどうなる?事例でわかる手続きの流れ

📋 この記事でわかること

・法人成りしたら建設業許可は引き継げるのか?

・【事例紹介】15年の個人事業から法人化したAさんの場合

・「取り直し」が必要な法的理由とは?

・よくある誤解とそのリスク

・個人時代の経験を法人許可に活かすには

・法人成り前にやるべき3つの準備

・【注意】こんなときも取り直しが必要!建設業許可の区分変更
 知事許可から大臣許可へ
 一般許可から特定許可へ
 業種追加時の注意点

個人→法人化で建設業許可は引き継げる?【行政書士が解説】

「個人事業から法人に切り替えたら、建設業許可もそのまま使えるんでしょ?」

事業者様からよくいただくこのご質問。
実は、法人化(法人成り)=新たに建設業許可の取り直しが必要です。

この記事では、「なぜ引き継げないのか?」を行政書士が法的根拠や手引きをもとにわかりやすく解説します。
さらに、個人時代の実績を活かす方法や手続き上の注意点も紹介します。


事例:大工業を営むAさんの場合

  • 埼玉県で個人事業として大工工事業を15年継続
  • 一般建設業許可(大工工事業)を取得済み
  • 取引先からの要望もあり、株式会社A工務店を設立(代表者は同じ)
  • 「法人になっても許可証そのままでいい?」いいえ!

結論:法人として「新規許可」が必要です

個人事業と法人は法律上まったく別の事業者(法人格)です。
たとえ「同じ代表者」「同じ事務所」「同じ業種」でも、建設業法における『許可の主体』が異なるため、許可は引き継げません。


法的根拠と手引きの記載

  • 建設業法 第3条:「建設業を営もうとする者」は、許可を受ける必要がある
  • 国土交通省・都道府県の「建設業許可の手引き」: 「個人から法人へ変更する場合は、新たに法人として許可申請が必要です」

➡ 個人と法人は「別人格」=新たな許可が必要


よくある誤解とそのリスク

  • 「屋号が同じだから大丈夫」→ ❌ 法的には無関係
  • 「従業員も変わっていないから許可も継続できるはず」→ ❌ 許可は法人名義で管理
  • 「申請しなくてもバレない?」→ ❌ 違法営業(無許可営業)となり罰則対象に

個人時代の実績は使える? → ✓ 条件付きで活かせます

1. 経営業務管理責任者(経管)の要件

→ 個人で5年以上代表経験があれば、法人側の経管として認められる可能性あり

2. 専任技術者の要件

→ 個人事業での実務経験・資格が法人でも通用するケース多数

3. 許可取得までのスケジュール感

→ 登記後、建設業許可申請 → 審査 → 許可通知まで1〜2ヶ月以上見ておく必要あり


法人成り前にやるべき準備とは?

  • 登記前に「いつから法人で受注・施工を始めるか」を逆算
  • 法人としての財務書類や人員体制の整理
  • 許可取得までの間に許可が必要な工事を受注しないように注意

法人化=建設業許可の「再取得」です

個人から法人へ変わるということは、許可の出発点も一度リセットされるということです。

ただし、これまでの経験や実績は新しい許可取得において強いアドバンテージになります。
制度を正しく理解して、スムーズに法人成りを成功させましょう。

Information

その他の許可の取りなおしについて

建設業許可は“区分が変わる”ときも取り直しが必要!


法人化に限らず、以下のようなケースでは、建設業許可を「取り直す(新規申請)」必要があります。

① 個人 → 法人化(法人成り)【取り直し必要】

これは本記事のメインテーマです。
「個人と法人は別人格」=別の事業者と扱われるため、法人名義で新たに許可を取得する必要があります。


② 知事許可 ⇔ 大臣許可の変更【取り直し必要】

建設業許可の「許可行政庁」は、営業所の数によって変わります。

区分要件
知事許可同一都道府県内にのみ営業所がある
大臣許可2つ以上の都道府県に営業所がある

例:

  • 埼玉県だけで営業していた会社が、新たに神奈川県に営業所を開設した場合 → 知事許可から大臣許可へ切替が必要
  • この場合、「変更届」ではなく、新たに大臣許可を申請し直す必要があります。

③ 一般許可 ⇔ 特定許可の変更【取り直し必要】

区分特徴
一般建設業許可下請契約額の合計が5,000万円未満(建築一式は8,000万円未満)
特定建設業許可5,000万円(建築一式は8,000万円)以上の下請契約を結ぶ場合に必要
例:
  • 元請として大型案件を受注するようになり、下請に5,000万円以上の工事を出す必要が出てきた
    → 一般許可では対応できないため、特定許可としての新規申請が必要

✅ 「区分変更届」ではなく、一般→特定への移行は新規許可として扱われるため、必要書類・審査基準も大幅に異なります。


④ 許可業種を追加したい【業種追加は“取り直し”ではないが…注意点あり】

これは完全な「取り直し」ではなく、業種追加申請という形になります。
ただし、次のような点に注意が必要です:

  • 既存の許可と更新時期を揃えるためのタイミング調整が必要
  • 経営業務管理責任者・専任技術者の「業種ごとの要件」が満たせているかを個別に確認

🔍 許可区分の変更=取り直しの具体的イメージ

変更内容変更の扱い備考
個人 → 法人新規取得法人格が変わるため
知事 → 大臣新規取得営業所が複数都道府県に
一般 → 特定新規取得審査基準が大幅に異なる
業種追加追加申請許可番号・有効期限は共有

まとめ:建設業許可は「誰が」「どこで」「どういう規模で」やるかで変わる

建設業許可は、「取り直し」が必要になるタイミングが意外と多くあります。

  • 法人成り(人格変更)
  • 営業所の追加(知事→大臣)
  • 元請としての規模拡大(一般→特定)

これらの変更は、単なる「変更届」では対応できません。

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