監理技術者制度の最新動向:直接的・恒常的雇用確認の重要性とその変更点
監理技術者制度について
監理技術者は、工事現場の安全と品質を守る要として重要な役割を果たしています。
そのため適切な資格と雇用条件を満たすことが求められています。
今回の改正ではこうした要件の確認方法を見直すことで、制度運用の公正性と信頼性を強化する目的があります。
健康保険被保険者証の新規発行終了に伴う背景と影響
改正の背景
健康保険証の発行が2024年12月2日以降廃止され、マイナンバーカードへ一体化されることが決定しました。
この制度変更により、これまで健康保険証が雇用関係を確認するための主要な書類として用いられていた建設業界にも影響が及びます。
監理技術者制度運用マニュアルは下記で公開されていますのでご参考としてください
建設業界への影響
健康保険証の廃止は雇用関係を確認するプロセスの変更を求められる一方で、法的な雇用確認の透明性を高めるとも機会となります。
この影響により、企業は他の代わりとなる書類を準備し、提出のための体制を整備する必要があります。
新たに認められる確認資料
健康保険被保険者証の代替として、以下の書類が雇用確認のために認められることになりました。
監理技術者資格者証
監理技術者資格者証は、直接的かつ恒常的な雇用関係を証明する最も主要な書類の一つです。
この資格者証には、所属する建設業者名が明記されており、雇用関係の証明として信頼性が高いとされています。
住民税特別徴収税額通知書
市区町村が発行する住民税の特別徴収通知書は、個人と雇用主の関係を明確にする書類として認められます。特に税務情報を通じて雇用主との関係を確認できる点が特徴です。
健康保険・厚生年金被保険者標準報酬決定通知書
健康保険および厚生年金に関する報酬決定通知書も、雇用関係の確認資料として利用可能です。給与情報と雇用主の情報を含むため、正確性に優れた資料とされています。
雇用証明書
所属建設業者が作成した雇用証明書も、有効な確認資料として認められています。この証明書には、雇用関係の開始日や職務内容が記載されるため、実務上もわかりやすい形式となります。
新しい確認方法導入の実務的対応
雇用確認資料の事前準備
企業は、監理技術者やその他技術者の雇用確認資料を事前に整備する必要があります。
雇用証明書のテンプレート作成や、住民税通知書の発行手続きの確認などが具体的な準備項目です。
システムの見直し
従来の健康保険証を用いた確認プロセスを見直し、新たな確認資料を管理・提出するための社内体制やシステムを構築することが求められます。
従業員教育
新しい確認方法について、監理技術者や総務部門に対して説明会を実施し、理解を促進することも重要です。
これにより現場と管理部門の連携がスムーズになります。
改正に伴う留意点
有効期限切れの健康保険証の扱い
2024年12月2日以前に発行された健康保険証は、引き続きその有効期限内であれば利用可能です。
そのため有効期限内の保険証を使用する場合の運用ルールも明確化しておく必要があります。
直接的・恒常的な雇用関係の定義について
そもそも直接的な雇用とは?
直接的な雇用とは、雇用者(建設業者)と被雇用者(監理技術者等)の間に第三者の介入がない、直接的な権利義務関係が存在する雇用形態を指します。この関係は、給与、勤務時間、職務内容、権利の構成などが雇用契約によって明確に規定されていることが特徴です。
具体例
直接的な雇用に該当するのは、建設業者が直接雇用契約を結んでいる技術者です。
一方で、以下のような場合は直接的な雇用とはみなされません。
- 派遣社員:派遣元企業を介して雇用されている。
- 在籍出向者:形式的には元の企業に所属し、他社で勤務している。
確認方法
直接的な雇用関係は、以下の書類等を用いて確認されます。
- 監理技術者資格者証(所属業者名の記載あり)
- 健康保険被保険者証
- 市区町村が作成する住民税特別徴収税額通知書
そもそも恒常的な雇用とは?
恒常的な雇用とは、特定の建設業者に一定期間以上継続して勤務し、安定的に職務を遂行している状態を指します。特に公共工事の場合、雇用関係の期間が明確に要件として規定されています。
具体的な条件
- 前の3か月以上の雇用が必要。
- 職務の安定性:日々の勤務時間や職務内容が安定していること。
- 技術力の熟知:技術者と建設業者が互いの技術力を熟知し、適切な施工管理が行える関係であること。
例外措置
以下のような場合は、恒常的な雇用関係が特例として認められることがあります。
- 合併や営業譲渡に伴う雇用関係の移行がある場合。
- 災害対応など、緊急時に必要な措置が講じられる場合
改正の影響と実務対応
施工体制への影響
- 技術者の雇用関係を強化することで、施工現場での技術管理体制が安定しますが、必要な人員を確保できない場合、工期遅延のリスクが高まる可能性があります。
対応策の提案
雇用確認資料の整備
- 技術者の勤務記録や雇用契約書の保存を徹底し、監査や提出要請に迅速に対応できるようにします。
- 新たな確認資料(住民税特別徴収税額通知書や雇用証明書など)を適切に発行する社内手順を確立します。
技術者の雇用戦略見直し
- 特定の工事に必要な技術者を早期に確保し、入札時点で要件を満たすような長期的雇用契約を推進します。
- 必要な技術資格や経験を有する人材育成に力を入れることで、将来の要件強化に備えます。
資格者証の管理体制の強化
- 技術者の資格更新期限や講習履歴をデータベースで管理し、資格者証や講習修了証が常に有効であるようにします。
- 技術者ごとの専任期間や配置記録もあわせて電子化し、現場ごとの情報を一元管理します。
社内教育と外部協力
- 人事・総務担当者向けに新制度対応の研修を実施し、必要な知識と手続きフローを共有します。
- 行政書士などの外部専門家と連携し、法的要件の遵守と効率的な運用を図ります。
今後の課題と期待される成果
課題
- 実務上、改正内容を理解しきれない現場技術者や中小企業が増加する可能性。
- 必要な資料整備が進まず、施工体制が整わないリスク。
期待される成果
改正によって技術者と企業の雇用関係が明確化され、施工の安定性や品質が向上することで、発注者からの信頼獲得につながります。
特に公共工事では、透明性が向上し、建設業界全体の健全な発展が期待されます。
さいごに
今回の監理技術者制度改正は、建設業界全体の透明性と信頼性を向上させる重要な変更です。特に直接的・恒常的な雇用関係の確認方法の見直しにより、技術者の配置基準がより厳格化されました。
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